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2022.06 経営余話

今年も愛の定期便

理事長 岩崎俊雄

 

令和3年度事業報告、決算等の目処がつき、特に、統括会計責任者をはじめとする経理事務担当者はホッと一息ついたものと思われる今日この頃です。おかげさまで、コロナ禍にあって減収を余儀なくされるものと思っていたのですが、微増という結果に、私も安心しているところです。

そんな中にあって、道路を挟んで我が家と法人事務所の間を流れる堀付近に、今年も蛍が出現しました。優しい光が心を和ませてくれる蛍は、慰霊碑にお祀りしている恩人や仲間からの『愛の定期便』と考えています。ただ、残念なことは、年々数が少なくなっているような感じがしていることです。

ところで、私が初めて福祉の現場に立ってから、今年で丁度50年になりますが、大学の実習でも福祉事務所の経験だけで、直接施設等の現場での経験はありませんでした。福祉の政策マンを志していた私にとっては、当たり前と言えば当たり前でしたが、児童指導員の任用資格を有するということからみれば、現場を知らない専門家は異質な存在でもありました。

昭和47年4月、知的障害児通園施設あゆみ学園指導係長、が私の福祉の原点です。最初の利用児の中に、脊髄小脳変性症のお子さんがおりました。同じ岩舟町から通っていたこともあり仲良しだったのですが、いつの頃からか「岩崎先生は怒るから嫌いだ」と、私を避けるようになりました。そんな私が施設を立ち上げるため退職することになり、お別れ会を開いてくれることになりました。その時彼女が「岩崎先生、辞めないで。本当は先生が好きだから」と、体を捻じりながら涙ぐんで話しかけてくれました。

その彼女が、知的障害者更生施設すぎのこ学園を利用するなど想像もしなかったのですが、18歳を待たずに入所を決めたのです。不随意運動のある彼女は、作業の時間よりも高齢の看護師と一緒に自室で過ごすことが多くなり、最後は自宅に戻ることになりました。看護師が自宅を訪問し、最後の看取りをすることをお願いしていた12月25日、看護師の手を握り「おばちゃん」と言って息を引き取りました。

ご指導いただいた方、そして『同じ釜の飯を食った』仲間をお祀りし、当時を思い出す慰霊祭を開きたい、それが慰霊碑を建立する大きな動機でした。役員の皆様、岩船山の住職さん、歴史あるとちのみ学園の園長さん等に相談し、茨城県の真壁から地蔵尊を迎え建立することにしたのです。それは『ウブゴエカラ灰トナリテマデ』の終の棲家的存在でもありました。当時はこんなに多くの皆さんをお祀りすることになるなど考えてもみませんでした。

お世話になった恩人、そして仲間からの愛の定期便、乱舞する蛍に見とれながら、50年間、半世紀という長きにわたり、私を、そしてすぎのこ会を支え続けてくれた多くの栃木の皆様に改めて感謝しました。

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